B2B ジャズ⇄ラップ往復書簡

大谷能生 著 / 中村拓哉

《反復》を知らずに、 《いま》は踊れない。ジャズとヒップホップのあいだで。
音楽と思想のあいだで。「聴くこと」と「のること」が更新される。
批評家・音楽家の大谷能生と中村拓哉による、ジャズとヒップホップをめぐる往復書簡。

定価
2,530円(本体2,300円+税10%)
ISBN
9784781625812
JANコード
1920073023005
発売日
2026年8月24日
判型
四六判  
製本
ページ数
432ページ
カテゴリー
趣味・実用

詳細Detail

  • 内容紹介
マイルス・デイヴィスから、BAD HOPへ。
蓮實重彦から、グランドマスター・フラッシュへ。
デューク・エリントンから、マーク・フィッシャーへ。

ジャズとヒップホップのあいだで。音楽と思想のあいだで。
「聴くこと」と「のること」が更新される。

ジャンルも世代も異なる批評家ふたりが描く、
音楽批評のまったく新しい地図。

《反復》を知らずに、
《いま》は踊れない。

【大谷能生さんによる「はじめに」抄】

これまで「共著」として結構な数の出版物を作ってきたけれど、「往復書簡」というスタイルは初めてで、いまこの「まえがき」を書きながら思うのは、たぶん、これから先に他の誰かともう1回コレをやってみることはなさそうな、実に絶妙というか奇遇というかたまたまというか、いろいろなタイミングがうまく重なることでこの一冊は仕上がったのだなあ……という感慨である。
元になった原稿は、リアルでもネットでも書店では買うことができない、しかしフツーに毎月「紙媒体」で出版され続けている『出版人・広告人』(株式会社出版人)という特殊な雑誌(失礼。しかし、ホントに!)に連載というかたちで発表されたものである。

この本では、このような変化の時期に重ねられた2年半分のやりとりを読み直し、当時のふたりが集中的に考えていたテーマに沿って書簡を整理・編集することで、ジャズとヒップホップ―日本語ラップにおける「歴史」や「概念」や「効果」や「現在」の差異と同一性が浮き彫りにされるような方向で章を構成しました。

第1部では、互いが「批評」をスタートさせた時の状況やモチベーションについて、そして、ジャズとヒップホップの日本における受容のされ方の異なりについてのやりとりがまとめられています。話の基盤となっているのは、『日本語ラップ名盤100』と『20世紀ジャズ名盤100』においてふたりが提出した「史観」なので、そちらも参考にしていただければ。

第2部では、まさに当時書き進められていた『日本語ラップ 繰り返し首を縦に振ること』および『音と言葉のデジタリティ』という著作でふたりが展開している、「反復=肯定」や「レコードのエクリチュール」といったテーマが、用語や概念のズレの確認なども含めながら、現在進行形の試行錯誤とともに議論されています。ヒップホップ/ジャズという音楽が、「ポスト1968年」的な思想&政治的状況とどのようなかたちで並走(場合によっては先行)しているかをふたりで突き詰めているこの部は、いわゆる「現代思想」の用語が頻出するので、この領域になじみの薄いミュージックラヴァーのみなさんには手強い印象を与えるかもしれません。
書簡ということで、ふたりが聴いたり読んだりしたことのあるミュージシャンや思想家/思想については、「知ってる」って前提で論をぶっ飛ばして展開している部分もあり、書き足し作業はかなりおこなったのですが、まだ言葉足らずになっている箇所も多いんじゃないかと思います。知らない固有名詞、わかりにくい概念、理解できない論の展開にぶつかった際には「知ったふりしろ!」ということで、AIさんにでもいろいろと尋ねたりしながら乗り切っていただければと。
しかし、どの話も土台となっているのは、「繰り返し首を縦に振る」という、音楽とともに我々がフロアで経験してきた歓びと快感です。第3部も同じく、当時の読書やイベントから得られたアレコレの経験や知識を、ここでふたりは繰り返し首を縦に振りながら分かち合っている。各往復書簡の後ろに付けられた、そして、本書のタイトルとして採用されている「B2B」=「Back To Back」とは、ふたりが交互に1曲ずつプレイするDJスタイルのことです。ふたりの論の往復と、読書のためのBGMとしてふさわしい選曲の書き下ろしが「B2B」ということで、ここで選んだサウンドを聴いていただくことで、ぼくらが繰り返している「反復=肯定」作業に読者の皆様も巻き込むことができたら、と思っております。

音楽と生の現在地をめぐる1972年生まれと1994年生まれのふたりの「批評家」の、21世紀の20年代半ばにおける意見の交換のドキュメントを楽しんでいただければ幸いです。


【目次】
Ⅰ 音の反復

1 批評はどこから始まるのか
2 ディスクガイドという批評
3 ジャズの入口を探して
4 ジャズのフロウ、ヒップホップのフロウ
5 日本語ラップ批評の現在地
6 インターコミュナリズムという視点
7 周期律動は身体を変える
8 韻が生を結びなおす
9 批評を本にするまで

Ⅱ 言葉の反復

1 マイク、声、ファルス
2 録音された声、ミュートされた主体
3 憑在論とクラックルノイズ
4 死者の声をレペゼンする
5 ラング、ディスクール、呼びかけ
6 押韻的コミュニケーションの場所
7 意味の手前の、声
8 エクリチュールからフロウへ
9 レコードを記号ではなく、実在として聴く
10 フラットなものの反復力

Ⅲ 生の反復

1 ラップという形式を読む
2 「アメリカの影」を超えて
3 ビートメイクと大衆文化の地下水脈
4 反復=肯定の批評へ
5 書かれた言葉がどのように身体に戻るのか
6 ふたつのブラックミュージック受容
7 ロックの否定性とダンスミュージックの肯定性
8 批評と生について
9 聴き方を他者へ手渡すこと

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