台湾文学の中心にあるもの
政治、そして多様性、台湾では文学が現実に社会を動かし続けている。
- 定価
- 1,980円(本体1,800円+税10%)
- ISBN
- 9784781624150
- JANコード
- 1920095018003
- 発売日
- 2025年1月28日
- 判型
- 四六判
- 製本
- 並
- ページ数
- 288ページ
- カテゴリー
-
文芸・小説
詳細Detail
- 内容紹介
政治、そして多様性、
台湾では文学が現実に人と社会を動かし続けている。
激動する歴史の中で、文学が社会を動かし、文学が人のパワーの根源となっている台湾。日本語で読める約50作品を紹介しながら、政治に翻弄されつつも、必死に格闘し、社会に介入してきた台湾文学を読み解き、その全貌を示す!
・著者メッセージ
台湾文学の中心にあるものは政治である。斎藤真理子『韓国文学の中心にあるもの』(イースト・プレス、2022年)は、私たち外国文学研究者に、自身の研究対象の文学の中心にあるものが何かという問いを突き付けた。「政治」、これが台湾文学研究者の現時点での私の答えだ。もちろん、文学は一様ではない。「〇〇文学の中心にあるのは××だ」と決めつけてしまうのは、傲慢である。恐らく、世界中の文学をすべて読んだ読者にしか言う資格はないだろう。何より、文学は、個人的なものであり、国家に紐づけされ存在しているものではない。だが、一方では、文学が国家に紐づけされることに、あるいはされないことに苦悩してきた文学もある。それが台湾文学だ。(「はじめに」より)
目次
はじめに──日本文学には政治が足りない?
第1章 同性婚法制化への道は文学から始まった
同性婚法制化への第一歩──『孽子(ニエズ)』
文学だからゲイ(禁忌)の物語を社会に発信できた
「同志」がすべての性的マイノリティを包括する言葉になるまで
レズビアンは自死を選ぶしかないのか──『ある鰐の手記』
台湾で同性愛の物語としても読まれた『ノルウェイの森』
白色テロのトラウマとゲイの息子と母──『花嫁の死化粧』
個人の物語から社会を語り始めたLGBTQ+文学──『次の夜明けに』
マイノリティの連帯――さまよえる故郷喪失者──『惑郷の人』
自死しないレズビアン文学の誕生──『向日性植物』
それでもゲイカップルがレズビアンカップルより圧倒的に少ない理由──『亡霊の地』
百合小説だからこそ回収されない関係性──楊双子『台湾漫遊鉄道のふたり』
第2章 女性国会議員が40%以上を占める国の文学の女性たち
衝撃のフェミニズム小説──『夫殺し』
私たち女性の台湾物語historyからherstoryへ──『迷いの園』「眷村の兄弟たちよ」
男性作家は台湾女性をどう描いてきたのか──『シラヤ族の末裔・潘銀華』『客家の女たち』
台湾映画で描かれる日本のタレントとAV女優
衝動的な欲望にまっすぐに生きる現代の女性たち──『愛しいあなた』
女性作家の自殺と#MeToo──『房思琪の初恋の楽園』
Netflixからの#MeToo
第3章 文学は社会を動かし、その瞬間をアーカイブし続けてきた
台湾文学といえない時代の郷土文学──「さよなら・再見」、「りんごの味」
表現の自由がないからこそ文学として書き留める──「山道」
二二八事件を誰が書くのか
名前を奪われ続けた先住民たち(先住民正名運動)──「僕らの名前を返せ」
作家と読者が寝食を共にする文学キャンプがなぜ台湾で興り、盛んなのか
311の教訓は台湾で生き続ける(反原発運動)──『グラウンド・ゼロ 台湾第四原発事故』
ひまわり学生運動三日目にSNSに大御所詩人が投稿した詩「今夜、彼らのために祈ってください」
移行期正義の表現──台湾の現代史がまるごとわかる『台湾の少年』
第4章 日本統治期が台湾文学にもらしたもの
なぜ台湾語の表記が確立できなかったのか
日本語教育を受けた作家たちは戦後の中国語社会をどう生きたのか
「皇民作家」としてスケープゴートにされた周金波
中国を学び書き続け、言語を超えた創作活動を行った作家──鍾肇政
発表媒体がないにもかかわらず日本語で書き続けた作家──黄霊芝
南洋での戦争体験を書く──『猟女犯──元台湾特別志願兵の追想』
なぜ被植民経験のない作家たちが日本統治時代を書くのか
「天然独」世代によりフラットに描かれ始めた植民差別──『台北野球倶楽部の殺人』
司馬遼太郎『台湾紀行』から30年、小林よしのり『台湾論』を超えられなかった日本社会
第5章 ダイバーシティな台湾文学の表記と翻訳の困難
台湾文学は何語で書かれているのか、戦後の中国語の作家と読者の量産計画と中国語では表現し得なかったもの
言文不一致の台湾の現実社会をそのまま書き表すことは可能なのか
天野健太郎訳『歩道橋の魔術師』をもし松浦恆雄・西村正男(関西弁)、倉本知明(瀬戸内方言)、山口守・三須祐介(標準語)が訳したら?
新しい台湾文学の文字表記を模索する呉明益・甘耀明・楊双子・温又柔・李琴峰と翻訳の可能性と不可能性
呉明益『自転車泥棒』──台湾語のローマ字表記の日本語訳
甘耀明『真の人間になる』──読みが確立していないブヌン語の日本語訳
楊双子『台湾漫遊鉄道のふたり』──台湾語を書かない
温又柔『真ん中の子どもたち』──日本語+多言語作品の台湾版翻訳
李琴峰『彼岸花が咲く島』──作家自身による、作家自身にしかできない実験的な翻訳
東南アジアの母語で書く移民工文学賞とダイバーシティな台湾文学の挑戦
おわりに──台湾文学の中心にある政治との対話を経て
あとがき
本文脚注
主要参考文献
本書で取り上げた台湾文学作品
台湾年表
台湾の基礎知識
台湾文学マップ
台湾では文学が現実に人と社会を動かし続けている。
激動する歴史の中で、文学が社会を動かし、文学が人のパワーの根源となっている台湾。日本語で読める約50作品を紹介しながら、政治に翻弄されつつも、必死に格闘し、社会に介入してきた台湾文学を読み解き、その全貌を示す!
・著者メッセージ
台湾文学の中心にあるものは政治である。斎藤真理子『韓国文学の中心にあるもの』(イースト・プレス、2022年)は、私たち外国文学研究者に、自身の研究対象の文学の中心にあるものが何かという問いを突き付けた。「政治」、これが台湾文学研究者の現時点での私の答えだ。もちろん、文学は一様ではない。「〇〇文学の中心にあるのは××だ」と決めつけてしまうのは、傲慢である。恐らく、世界中の文学をすべて読んだ読者にしか言う資格はないだろう。何より、文学は、個人的なものであり、国家に紐づけされ存在しているものではない。だが、一方では、文学が国家に紐づけされることに、あるいはされないことに苦悩してきた文学もある。それが台湾文学だ。(「はじめに」より)
目次
はじめに──日本文学には政治が足りない?
第1章 同性婚法制化への道は文学から始まった
同性婚法制化への第一歩──『孽子(ニエズ)』
文学だからゲイ(禁忌)の物語を社会に発信できた
「同志」がすべての性的マイノリティを包括する言葉になるまで
レズビアンは自死を選ぶしかないのか──『ある鰐の手記』
台湾で同性愛の物語としても読まれた『ノルウェイの森』
白色テロのトラウマとゲイの息子と母──『花嫁の死化粧』
個人の物語から社会を語り始めたLGBTQ+文学──『次の夜明けに』
マイノリティの連帯――さまよえる故郷喪失者──『惑郷の人』
自死しないレズビアン文学の誕生──『向日性植物』
それでもゲイカップルがレズビアンカップルより圧倒的に少ない理由──『亡霊の地』
百合小説だからこそ回収されない関係性──楊双子『台湾漫遊鉄道のふたり』
第2章 女性国会議員が40%以上を占める国の文学の女性たち
衝撃のフェミニズム小説──『夫殺し』
私たち女性の台湾物語historyからherstoryへ──『迷いの園』「眷村の兄弟たちよ」
男性作家は台湾女性をどう描いてきたのか──『シラヤ族の末裔・潘銀華』『客家の女たち』
台湾映画で描かれる日本のタレントとAV女優
衝動的な欲望にまっすぐに生きる現代の女性たち──『愛しいあなた』
女性作家の自殺と#MeToo──『房思琪の初恋の楽園』
Netflixからの#MeToo
第3章 文学は社会を動かし、その瞬間をアーカイブし続けてきた
台湾文学といえない時代の郷土文学──「さよなら・再見」、「りんごの味」
表現の自由がないからこそ文学として書き留める──「山道」
二二八事件を誰が書くのか
名前を奪われ続けた先住民たち(先住民正名運動)──「僕らの名前を返せ」
作家と読者が寝食を共にする文学キャンプがなぜ台湾で興り、盛んなのか
311の教訓は台湾で生き続ける(反原発運動)──『グラウンド・ゼロ 台湾第四原発事故』
ひまわり学生運動三日目にSNSに大御所詩人が投稿した詩「今夜、彼らのために祈ってください」
移行期正義の表現──台湾の現代史がまるごとわかる『台湾の少年』
第4章 日本統治期が台湾文学にもらしたもの
なぜ台湾語の表記が確立できなかったのか
日本語教育を受けた作家たちは戦後の中国語社会をどう生きたのか
「皇民作家」としてスケープゴートにされた周金波
中国を学び書き続け、言語を超えた創作活動を行った作家──鍾肇政
発表媒体がないにもかかわらず日本語で書き続けた作家──黄霊芝
南洋での戦争体験を書く──『猟女犯──元台湾特別志願兵の追想』
なぜ被植民経験のない作家たちが日本統治時代を書くのか
「天然独」世代によりフラットに描かれ始めた植民差別──『台北野球倶楽部の殺人』
司馬遼太郎『台湾紀行』から30年、小林よしのり『台湾論』を超えられなかった日本社会
第5章 ダイバーシティな台湾文学の表記と翻訳の困難
台湾文学は何語で書かれているのか、戦後の中国語の作家と読者の量産計画と中国語では表現し得なかったもの
言文不一致の台湾の現実社会をそのまま書き表すことは可能なのか
天野健太郎訳『歩道橋の魔術師』をもし松浦恆雄・西村正男(関西弁)、倉本知明(瀬戸内方言)、山口守・三須祐介(標準語)が訳したら?
新しい台湾文学の文字表記を模索する呉明益・甘耀明・楊双子・温又柔・李琴峰と翻訳の可能性と不可能性
呉明益『自転車泥棒』──台湾語のローマ字表記の日本語訳
甘耀明『真の人間になる』──読みが確立していないブヌン語の日本語訳
楊双子『台湾漫遊鉄道のふたり』──台湾語を書かない
温又柔『真ん中の子どもたち』──日本語+多言語作品の台湾版翻訳
李琴峰『彼岸花が咲く島』──作家自身による、作家自身にしかできない実験的な翻訳
東南アジアの母語で書く移民工文学賞とダイバーシティな台湾文学の挑戦
おわりに──台湾文学の中心にある政治との対話を経て
あとがき
本文脚注
主要参考文献
本書で取り上げた台湾文学作品
台湾年表
台湾の基礎知識
台湾文学マップ
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