はじめての福島学

開沼博

「福島難しい・面倒くさい」に
なってしまったあなたへ--

定価
1,650円(本体1,500円+税10%)
ISBN
9784781613116
NDC分類
302
発売日
2015年2月27日
製本
ページ数
412ページ
カテゴリー
政治・社会

詳細Detail

  • 内容紹介
  • 目次
福島第一原発事故から4年経つ今も、メディアでは放射線の問題ばかりがクローズアップされている。しかし、福島の現実は今どうなっているのか、そして、福島の何を今語るべきなのか? 『「フクシマ」論』で鮮烈な論壇デビューをはたした社会学者・開沼博が、福島問題を単著で4年ぶりに書き下ろし。人口、農林水産業、観光業、復興政策、雇用、家族、避難指示区域……。福島を通して、日本が抱える「地方」問題をもえぐりだした一冊。

開沼博(かいぬま・ひろし) 1984年福島県いわき市生まれ。東京大学文学部卒。同大学院学際情報学府博士課程在籍。専攻は社会学。現在、福島大学うつくしまふくしま未来支援センター特任研究員。著書に『「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか』(青土社)、『フクシマの正義 「日本の変わらなさ」との闘い』(幻冬舎)、『漂白される社会』(ダイヤモンド社)など。
福島を知るための25の数字
はじめに

―01 復興
復興が「早すぎた」弊害も大きい
復興予算の問題とは何か
予算分配は「白」か「黒」かだけではない
「復興が遅れている」って言うな

―02 人口
福島の人口流出は10倍誤解されている/避難者は県内に戻りつつある/制度から漏れ落ちる「マイノリティ」の県外避難者/福島で起こっていることは、普遍的に起こっていること/「人口流出」よりも「人口減少」に注目する/福島の人口は意外と持ちこたえている?/震災の影響が少ない秋田・青森・山形のほうがヤバい/福島の人口減少は「平常運転」に戻りつつある/問題は人口減少よりも急激な少子高齢化/ベストセラー『地方消滅』の衝撃/「25年」のタイムスパンが持つ意味/「惨事便乗型」知識人が去った後に/来るべき「新しい社会のモード」を考える/「人口減少対策」=「少子化・子育て対策」ではない!/「福島の人口、30年後に半減の予測」は何が問題か/スティグマを強化するな/「課題の単純化の問題」があふれるメディア/福島では人口が増えている/「失われた20年」を取り戻させたバブル景気/緩慢に起こるはずの変化を、原発事故が10倍速に

―03 農業
「定番ネタ」が人の目を引かなくなった時に/センセーショナリズムが煽るのは、恐怖と憤怒/吉田調書問題に象徴されるセンセーショナリズム/「食べて応援・知って応援派」のパターンとは/「福島の食べ物ヤバい派」のパターンとは/「福島の食べ物ヤバい派」は2割程度/3分に1回、「放射能は危ない」と投稿する人たち/二つの数値から福島の農業が見える/福島にはなぜ「米どころ」のイメージがない?/「豊かだから」こそ、イメージづくりが必要ない/「時期をズラす」という戦略/「一つの金メダルよりも多数の入賞を」作戦/3・11後に作付面積・収穫量ともに2割減/「死の町」でも農業が再開できる理由/農業における放射能対策とは、セシウム対策のことである/セシウム対策でカリウムを撒くのは、チェルノブイリから学んだ…120/福島の米はトップ集団から第二集団に転落…123/「生産」と「消費」だけでなく、「流通」を考えよ/「生産」は回復しつつあるが「価格」が上がらない現実/市場メカニズムの中でポジションを見つけた「3・11後の福島の米」/農業を続けるのは、それが生活の一部だから/良識派ヅラした偽善者の傲慢に付き合うな/これまでの「農業で食っていく」方法が通用しなくなった/「潜在的な農業引退者」が3・11後に顕在化した/福島の農業の問題は、日本の農業の問題である/「六次産業化」ってなんだ?/「物語」で付加価値をつける/「スター農家」の勝ち組以外に目を向けよ/放射線の政治問題化が「普通の人」を去らせる/「福島がどうなるかわからない」じゃなく、あなたが福島をわかってない/「福島難しい・面倒くさい状態」になってしまったワケ/なぜ見解が無数にあるように「見える」のか/イスラム教も福島も「ローコンテクスト化」が必要/知的体力不足が「ハイコンテクスト化」を招く/「また基準値超えが!」報道の事態とは/検査の対象は「玄米」であることに注意すべき/放射線が気になる人の「選択の自由」も確保されている/福島産を避けても放射線のリスクは残る/日本の基準値は欧米の10倍厳しい/3・11後に日本は基準を5倍厳格化した/自分の「ものさし」を持って、「ある程度」を判断する/厳格派とも大きな見解の相違がないストロンチウム/検出限界値ギリギリの物を食べ続けても、セシウムはたいして増えない/食事に含まれる放射性物質や被曝の量はゼロにならない/日常の食事に含まれる放射線量を知る/大規模調査では県民99%から放射線が検出されず/米と野菜・果物では、ここが違う/天然キノコや山菜を食べる習慣ある人が検査で引っかかった/「チェルノブイリで起こったことが日本でも起こる」と言うのは無知の極み/8日で半減期を迎えるヨウ素は、もうほぼ存在しない/チェルノブイリでの知見があったから、福島は対策がとれた/「福島の問題=放射線の問題」に矮小化するな/厳格派も穏健派・容認派も、互いの価値観は守られるべき/「科学では語れない」と開き直るのは、ただの知的怠慢/「過剰反応」でもなく「無視」でもなく/「科学的な答えに終始」もコミュニケーションの失敗の一つ/もはや「両論併記」型は百害あって一利なし/「科学的な前提にもとづく限定的な相対主義」に移行せよ

―04 漁業・林業
漁業は震災前と比べてどれだけ回復しているか/回復は「57%」「9%」―なぜ答えが二つあるのか/色々な漁港に水揚する故、数字の違いが出てくる/「57%回復」という数字で、状況は把握できない/水産加工業はスピーディーに回復傾向/風評被害による価格低下が続いている/3・11前から衰退していた漁業/「試験操業」で再開しつつある福島の漁業/「不幸中の幸い」を生み出すために/住宅需要により林業は97・7%回復/放射性物質が固定化された山林とどう付き合うか/モニタリング、ブランディング、ターゲティング/科学では越えられない「宗教」的な壁

―05 二次・三次産業
福島に一次産業従事者は多いか?/「福島=電気で成り立ってきた」も間違い/それでも一次産業に注目すべき理由/「風評被害」を乗り越えた日本酒/「復興バブル」で何が悪いか/製造業への影響は震災よりもリーマンショックが大/医療機器とロボットを製造業の新機軸に/観光客の数は84・5%戻ってきている/避難区域のある浜通りは依然厳しい/新たな観光客を呼び込んだスパリゾートハワイアンズ/子ども=修学旅行客は戻らず、3・11前の半分以下/積極的に外国人観光客向けの情報発信を

―06 雇用・労働
復興需要で雇用は活性化/人材不足は「工事関係」と「医療・福祉」/「宿泊旅行者」は3・11後に2~3割増/現実は企業倒産の大幅減少と人材不足/高齢者・女性・外国人が活躍できるように

―07 家族・子ども
流産や先天奇形の割合は震災前後で変化なし/離婚率は下がり、婚姻率は上がる気配も/出生率は全国最大幅のV字回復!/体力低下、肥満、虐待などの間接的な害の顕在化/福島の初婚年齢はずっと謎の全国1位

―08 これからの福島
「ビッグワード」に頼らずに福島を語る/帰還困難区域、避難指示区域、避難指示解除準備区域とは何か/「今は決められない」という立場も尊重を/「広野町に住んでいる人」はどれぐらい?/外から働きに来た「新住民」vs治安悪化を怖がる「旧来住民」/新たにできる商業施設で生活再建/広野町から楢葉町、富岡町へと北上する復興/産業復興だけでなく生活復興を/「除染」をめぐる内と外のギャップ/中間貯蔵施設の問題は場所よりも「輸送」/中間貯蔵施設を受け入れるまで…381/後手に回る避難者のケア

おわりに〜福島にどう関わるか〜
福島へのありがた迷惑12箇条
福島を知るための25の数字[答え]
福島学おすすめ本・論者リスト
間違いだらけの「俗流フクシマ論」リスト

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