シャープ「企業敗戦」の深層 大転換する日本のものづくり

中田行彦

鴻海買収決定! シャープ在籍33年の著者が明かす、巨艦シャープ落日の実相。          

定価
1,760円(本体1,600円+税10%)
ISBN
9784781614144
NDC分類
335
発売日
2016年3月15日
製本
ページ数
286ページ
カテゴリー
ビジネス・経済

詳細Detail

  • 内容紹介
  • 目次
「液晶のシャープ」と言われた「勝ち組」が、なぜ敗戦にまで陥ったのか?
今後、日本企業のものづくりはどのようになるのか?
本書はシャープの技術者として33年間勤務し、最先端の液晶技術研究と巨艦シャープの企業病、組織内部の問題点を熟知する元・液晶研究所技師長(現・立命館アジア太平洋大学教授)の著者が、なぜシャープが凋落したのかを描いた衝撃の企業敗戦ノンフィクションである。シャープ敗戦の原因を「当事者」と「分析者」という二つの観点から分析し、グローバル競争と変化への対応を読み間違えた巨大メーカー崩壊の深層に迫る。シャープ敗戦の教訓から日本のものづくり復活へのヒントを描き出す。シャープ敗戦までの過程を描くNHKスペシャル放映に合わせて緊急出版!

中田行彦(なかた・ゆきひこ)
1946年、京都生まれ。1971年神戸大学大学院卒業後、早川電機工業(現・シャープ株式会社)に入社。以降、33年間勤務。太陽電池の研究開発に約18年、液晶の研究開発に約12年関わり、液晶研究所技師長等を歴任。その間、3年間米国のシャープ・アメリカ研究所研究部長等を務める。2004年から、立命館アジア太平洋大学の教授として「技術経営」を教育・研究。現在、立命館アジア太平洋大学教授(技術経営)兼同大学アジア太平洋イノベーション・マネジメント・センター長。日本MOT学会企画委員長。2009年10月から2010年3月まで、米国スタンフォード大学客員教授。工学博士(大阪大学)、博士(技術経営:立命館大学)。
はじめに

第1部 シャープ買収へ

第1章 鴻海vs産業革新機構の攻防

鴻海案のほうが経済合理性にかなう
「技術流出防止」か「グローバル化」かの選択
全社員の13%という大規模リストラ
リストラで懸念される技術の国外流出
それでも技術流出を恐れた国と産業革新機構
国の政策で動く実質的な国営ファンド
なぜ鴻海はシャープを欲しがったのか?
強い「資源」がなければ誰も助けない
シャープとの提携でサムスンに勝つという戦略
郭会長のシャープへの片思いが実った
高コスト体質の深層
幻に終わった中小型液晶で世界シェア1位

第2章 大荒れとなった株主総会

大阪駅からタクシーに乗って会場に向かった
高橋社長が述べた業績悪化の原因と再建策
減資して資本金を5億円にすることへの批判
「債務の株式化」と「優先株」の発行
マスコミ報道によってイライラが募る
社長、取締役への辞任要求が相次ぐ
経営理念、技術流出、リストラへの懸念
鴻海との提携、液晶か家電かの選択

第3章 「DES」と「減資」という奇策

企業存続の崖っぷちに立ったシャープ
「債務の株式化」(DES)の仕組みとは?
「減資」によってなぜ損失を埋められるのか?
信任がないために情報が上がらず
紙屑となったJALとスカイマーク株
「99・6%減資」したダイエーは結局は上場廃止に
第4章 「コーポレート・ガバナンス」機能せず

「仏つくって魂入れず」だった企業統治システム
「コーポレート・ガバナンス」とはなにか?
組織内では日常的に「コンフリクト」が起こる
事業文化が違うことが事業部間抗争を招く
創業理念を引き継いだ2代目佐伯社長時代
液晶投資を拡大させた町田・片山時代
トップが現場を把握できていない現実

第5章 「太陽電池」でも敗戦

なぜ太陽電池の生産にこだわったのか?
「太陽電池バブル」の絶好機に利益が出ない
創業者の悲願だった太陽電池の研究開発
なぜシャープは世界1位から陥落したのか?
薄膜太陽電池の生産に大きく舵を切る
メガソーラー向け薄膜太陽電池生産を停止

第2部 投資戦略で「第1の敗戦」

第6章 そもそも「液晶」とはなにか?

液晶は情報を「見える化」する装置
窓に下げるブラインドと同じ原理
表示装置としての液晶の優位性とは?
液晶技術は一種の偶然によって見つかった
数字は表示できても動画は表示できない
薄膜太陽電池の生産停止が追い風に
たった2センチの差が幸運を呼び込んだ
14インチのディスプレイに「出世払い」で挑戦
「3年で1・8倍」になる「西村の法則」
世代交代は「1・8倍」から「2倍」に加速
最終的に恩恵を受けたのは韓台企業だった

第7章 日の丸半導体と同じ道を

米国から日本、そして韓国・台湾と勝者が変わる
必要なときに必要なモノに投資する
「技術信仰の罠」に陥った半導体産業
「イノベーションのジレンマ」にはまった半導体
合従連衡を繰り返した後に決定的な敗戦
なぜ韓国・台湾に日本は追い抜かれたのか?
あとから投資して「後発者利益」を持っていく

第8章 シャープの強みの源泉

研究・開発の中心となった「中央研究所」
配属先は「無機EL」の研究・開発グループ
「無機EL」ディスプレイが国際的な賞を受賞
互いに協力して創造する「共創」という考え方
リスクを取って挑戦を受け入れる精神
「現場力」が液晶の生産を支えていた
早い段階からの「すり合わせ」が必要
競争力の源泉は「組織的知識創造」にあった
「モジュール」が「すり合わせ」を駆逐した

第9章 「選択と集中」は正しかったのか?

一種のブームだった「選択と集中」
「ブラウン管を液晶に置き換える」という挑戦
亀山の液晶は日本の高度な技術の象徴
亀山工場は「垂直統合型」ビジネスモデル
「第6世代」「第8世代」への積極投資
亀山工場で行われた「すり合わせ」
全国から亀山に関連企業が集結した

第10章 仕掛けられた罠「激安液晶テレビ」

突然登場した「5万円テレビ」の衝撃
テレビの部品はみな「モジュール」になった
「クリスタルサイクル」で液晶価格が下落
「ボリュームゾーン商品」と「ハイエンド商品」
サムスンがシャープ潰しのために罠を?
サムスンの「状況証拠」と「残存者利益」

第11章 「堺工場」という巨額投資

「21世紀型コンビナート」をつくる
日本型ものづくりの究極のかたちを実現
堺工場への投資は間違いではなかった
巨大すぎてすべてに費用がかかりすぎた
技術革新がなかったのでコストダウンできず
4原色テレビの不振と外販という〝成功の罠〟
ソニーと提携するも納入遅延で信用失墜
「負の連鎖」で危機は顕在化した

第3部 中国スマホで「第2の敗戦」

第12章 中国スマホで決定的敗戦

なぜ「日の丸液晶連合」JDIがつくられたのか?
シャープはなぜJDIに参加しなかったのか?
命運を賭けた中国スマホ市場への食い込み
台湾タッチパネルメーカーの突然の破綻
JDIに間隙を突かれる
「山寨機」の登場でものづくりが変わった
いまや「1000元スマホ」が中国市場を席巻
パソコンに続きスマホまで「モジュール化」

第13章 日本の液晶産業の未来

デジタル化がモジュール化を進めた
三つの対立概念と正しい企業行動とは?
イノベーションのジレンマの3パターン
日の丸液晶連合JDIに勝機はあるのだろうか?
中国の液晶への「爆投資」が進む未来
「有機EL」に活路を求める韓国勢
2018年の「液晶大転換」に適応できるだろうか?

第14章 すり合わせ国際経営2.0

生き残れるのは変化に適応できた者だけ
「インダストリー4.0」と「IoT」とは?
いまや「すり合わせ」は遠距離でもできる

おわりに

参考文献

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