大人たちはなぜ、子どもの殺意に気づかなかったか?

草薙厚子

子どもたちの「脳」にいま、起こっていること。発達生涯の具体的対策も満載!

定価
1,650円(本体1,500円+税10%)
ISBN
9784781605043
NDC分類
368
発売日
2010年10月31日
製本
ページ数
270ページ
カテゴリー
政治・社会

詳細Detail

  • 内容紹介
  • 目次
あなたのお子さんは、こんなサインを発していませんか?

・いろいろなことを話すが、状況や相手の感情、立場を理解しない。
・周りの人が困惑するようなことも、配慮しないで言ってしまう。
・言葉の本当の意味がわからず、表面的に、言葉通りに受け止めてしまう。
・会話のしかたが形式的で、抑揚がなく、間合いが取れない。
・みんなから「○○博士」「○○教授」と呼ばれている。
・ある行動や考えに強くこだわり、変更や変化を嫌がる。

少年事件を取材していくと、多くの少年事件の加害者は、「広汎性発達障害」という精神医学的な問題を持っていた。彼らは「悪意なく人を殺そうとした」ことや、「犯した罪の重さを実感できない」加害者たちだったのである。「殺意がないのに人を殺してしまう子どもたち」に、私たち大人はどうすれば気づくことができるのか。その行動を未然に防ぎ、回避するためには、いったい何が必要だったのか。そのことを、実際に起こった事件から考察してみたいと思う。

【著者紹介】
草薙厚子(くさなぎ・あつこ)
元法務省東京少年鑑別所法務教官。地方局 アナウンサーを経て、通信社ブルームバーグL.P.に入社。テレビ部門でアンカー、ファイナンシャル・ニュース・デスクを務める。その後、フリーランスとして独立。現在は、ジャーナリスト、ノンフィクション作家として執筆するほか、講演活動やテレビ番組のコメンテーターとしても活躍中。2007年5月に刊行された『僕はパパを殺すことに決めた 奈良エリート少年自宅放火事件の真実』(講談社)は、少年の供述調書の扱いをめぐって物議を醸し、現在でも入手不能となっている。その他の著書に、『子どもが壊れる家』『少年A矯正2500日全 記録』(文藝春秋)『追跡!「佐世保小六女児同級生殺害事件」』(講談社)などがある。
はじめに──「動機が不可解」な少年事件の取材でわかったこと

第一章 発達障害とは何か?

なぜ、発達障害は顕在化しないのか
発達障害への偏見
動機が不可解な少年事件
「心の闇」の一言で片づけていいのか
急増する特異な少年事件
本当にビデオやテレビゲームが原因なのか
少年事件の加害者に見られる共通点
発達障害の分類と診断基準
「広汎性発達障害」の定義と概念の歴史
「注意欠陥多動性障害」(ADHD)と「学習障害」(LD)
少年事件は「二次障害」によって起こる
発達障害者の犯罪を未然に防ぐために
第二章 佐世保小六女児同級生殺害事件

血の海となった教室
「普通の子による殺人」と報じたマスコミ
精神鑑定の結果
児童自立支援施設の対応
少女の生活環境
少女の同級生を激しく責める父親
見逃されたサイン
事件までのカウントダウン
つかなかった診断名
医師はなぜ、診断名をつけなかったのか
少女が被害者を憎んだ「ささいな理由」

第三章 静岡タリウム少女母親毒殺未遂事件

「お前がやったのか」
少女の生活環境
『毒殺日記』との出会い
少女が心酔した毒殺犯グレアム・ヤング
事件へのカウントダウン
たまたま近くにいたのが母親だったから⋯⋯
父親の動揺と葛藤
かき消された少女への疑念
精神鑑定の結果
少女の症状を悪化させた「ある出来事」
少女はなぜ「分身」をつくったのか
「それでも妻は娘の幸せを願っている」

第四章 奈良エリート少年自宅放火殺人事件

「心の闇」と結論づけたマスコミ
少年の生活環境
父親による体罰の始まり
「ウソをついたら殺すぞ」
僕はパパを殺すことに決めた
事件までのカウントダウン
不可解な逃亡先
精神鑑定の結果

第五章 少年事件と「脳」の関係

激変する少年犯罪の「動機」
発達障害と「脳」の関係
発達障害と「脳」の研究の歴史
発達障害者と健常者の「脳」の違い

第六章 親たちに何ができるか?

一定の割合で存在する発達障害の子ども
「活発な子ども」だと思っていたが⋯⋯
小学校が見せた配慮
担任の誤った対応
「ときどき死にたくなる」
「手のかからない子ども」だと思っていたが⋯⋯
医師の不用意な発言
そして、働くことすらできなくなった
なぜ、彼らは「空気が読めない」のか
「たとえ話」が通じない
「発達障害者には天才が多い」は本当か

第七章 学校に何ができるか?

現代の子どもたちは何に悩んでいるのか
「キレやすい子ども」が増えた理由
発達障害者の適応に効果的な「SST」とは
「心の教育」を実践している学校
早期のカミングアウトが「事件」を防ぐ
始まったばかりの「特別支援教育」
「発達障害者支援法」は機能しているのか
支援を妨げる「二次的」な問題を防ぐには
第八章 司法に何ができるか?

なぜ、裁判結果に「天国と地獄」の差が生まれるのか
被害者には受け入れがたい判決
「矯正後」のケアはどうなっているのか

終 章 私が『僕はパパを殺すことに決めた』で伝えたかったこと

おわりに──発達障害者と共存できる社会をつくるために

参考文献

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